親御さんインタビュー「とにかく必死で生きるとか死ぬとか良くわからなかった」河西さん第1話

・けみさん

よろしくお願いします!お母さんONEARTの冊子って貰ってますか?

・河西さん

よろしくお願いします。冊子!?いや、貰ってないですね笑

・けみさん

おー、まじか。大問題ですね。じゃあ、良くわかってないで今日参加してくれたんですね。

・河西さん

えっと、そうですね笑

・けみさん

ありがとうございます!

・河西さん

いえいえ。

・けみさん

冊子は共有ないみたいだけど、ここうぇる(北海道の重症心身型の施設)はね。ぶっちぎってる施設ですよ。何かって言うと、先生の中にミュージカル調に歌う人がおって、その人につられて、全員ミュージカルやるんだわ。指示を歌で出すの。それぐらい変わってて素晴らしい施設なの。なので今後ともよろしくお願いします!

・河西さん

あ、お願いします笑。こちらこそ。

・けみさん

と言うことで、本題に入っていきます。ゆうたくんの障がいはどういった障がいですか?

・河西さん

脳性麻痺とウエスト症候群という血管の病気です。あと、自閉症スペクトラム、コレは最近わかったんですけど、はい。この3つですね。

・けみさん

彼は車イスでしたっけ?

・河西さん

そうですね。歩けないですね。おしゃべりもあまり、ちょっとしたカタコトの一歳児ぐらいのおしゃべりはするんですけど。文章では話せないですね。

・けみさん

ゆうたくんは生まれた時どんな感じでしたか?

・河西さん

えっと、双子なんですけど704gと724gの双子で生まれてきました。

・けみさん

え、どういうこと?二人ともめっちゃ小さいの?

・河西さん

そうですね。おっきめのキウイぐらいの頭でしたね。最初は。

出産当時のお写真

・けみさん

え、まじで?俺わかってないかも。普通の子供3,000gぐらいですよね?どういうこと?

・河西さん

早く生まれちゃったんですよね。ちょっと双子っていうのもあって、胎盤が一つしかないのに、二人で栄養を取り合ってしまって、そのままお腹の中にいると栄養を摂りすぎたほうが死んじゃう可能性が高いらしくて早く産まなきゃいけなかったので。その栄養を摂りすぎてたのが、ゆうたの方だったんですよね。

・けみさん

じゃあ、生まれたばっかの時は小人だ。

・河西さん

そうですね。ほんと宇宙人みたいな見た目でした。皮膚がまだできてなかったので。

・けみさん

あの、僕もね。産まれた時に変な産まれ方したので。そんなに小さくなかったけど笑

・河西さん

そうなんですね。産まれた時は髪とか生えてたんですけど、本当に小さくて「お腹の中の1日は産まれた後の一年に相当する」って言われましたね。一日でも長くお腹にいた方がいいと言われて、でも片方が死んでしまう可能性があって、片方が死ぬともう片方も死んでしまうらしいんですよね。なので、二人とも生きて産まれるためのギリギリのところで、産んだっていう状態ですね。

・けみさん

お疲れ様です。いや、男って極論そういうの分からないから。男で、すみません。

・河西さん

いや笑

・けみさん

で、その後どういう風でした?

・河西さん

ゆうたの方はその後、脳出血をしたんですよね。それで、水頭症(頭に水がたまる病気)になって、頭から水を抜くための手術を産まれて数日でして。もう一人の方はもっと危なくて「今日がヤマです」「あと1週間がヤマです」ってヤマですがずっと続いてて、生きられるかなっていう状態だったんですよね。逆に、ゆうたの方は、生きる力がすごく強くって、生きる力が強いと悪い病気もどんどん出てくるみたいで、未熟児網膜症っていう目の病気にもなって、その手術もしましたね。もう一人の方はギリギリのところでずーっと生きてたので、悪い病気とかも一切出てこなかったんですよね。それが功を奏してというか、幸いに後遺症なく生活できてるんですよね。

・けみさん

ほー。じゃあ、ゆうたくんは産まれてすぐ二つの手術をしたの。その時お医者さんから障がいが残るかもしれないっていうのは言われました?

・河西さん

うん、そうですね。ちっちゃく産まれるとほとんどの確率で障がいが出てくるみたいで、それは言われましたね。でも、当時は障がいって言われてもどんなものか全然分からなくて。

・けみさん

その時なんてテレビつけても地震のニュースばっかだしね。

・河西さん

病院に毎日通って、帰ってきてもそういうニュースばかりで、気が動転してましたね。

・けみさん

その当時、その状況はまじできつかったですね。

・河西さん

そうなんです。しかも、その当時長男も一歳になったばっかりだったんですよ。だから家も大変だし、世の中も大変だしって感じでしたね。家族が全員揃うのは二歳ぐらいまでなかったですね。必ず誰か入院してたりとか長男が親戚のお家に預けられたりとかで。

・けみさん

手伝ってくれる身内が近くにいたのは良かったですね。すごい、壮絶なスタートだね。

・河西さん

そうですね、しばらくは壮絶でしたね。家にいても一人だとみんなの面倒を見切れなくて

・けみさん

今、何歳でしたっけ?

・河西さん

長男が中学一年生で、他は小学校六年生で、次男長男は自分のこと自分でできるようになったのでかなり楽になりましたね。むしろ手伝ってくれたりするので。でも、ここまでくるのがもう大変でしたね。

・けみさん

ほんとそうね。動かないのも大変だけど、動き回られるのも大変だもんね。

・河西さん

そうですね笑

・けみさん

そりゃあ、大変だわ。ほんとに。3.11と絡んだのがめちゃくちゃ壮絶や。

・河西さん

そうですね。本当に訳が分からなかったです、その当時は。毎日必死だったんだと思うんですけど。とりあえず先生の話をはいはいって聞いて、できることはやろうっていう気持ちだけでしたね。

・けみさん

いや、そりゃ訳わからんよ。

・河西さん

でも、お兄ちゃんは今思うと少し可哀想でしたね。一番甘えたい時にずっと私が病院通いだったりしたので。いつも心配したりイライラしたりしてたので、ちゃんと見てあげられてなかったなと思いますね。

・けみさん

それはでもちゃんと伝わってますよね、お兄ちゃんに。

・河西さん

うーん、伝わってるとは思うんですけど、不安症で「お母さんが今日も帰ってこないんじゃないか」とかがあって、なかなか留守番ができなくて「お母さん行ってくるね」っていったきりもしかしたら戻ってこないんじゃないかとかはあるみたいです。なので、なるべく学校から帰ってくる時には私は家にいようとか、なるべくお兄ちゃんが安心するように今もやってますね。

・けみさん

ちょっと話はそれますけど、そういうトラウマは結構良くあるんですよ。年子と3.11は究極すぎますけど。上の子が普通で、下の子に障がいがあって、お母さんと下の子がずっと入院してって子は結構いますけどね。自我がちゃんとするころにお母さん「愛してる」って言って、ハグしてあげてください。でも、彼の場合表面的に出てて良かった。みんな表面的に出ないから。

・河西さん

そうですね。そういう時はきちんと話をするようにはしていますね。

・けみさん

うん、良かった。で、今は長男と双子の兄の方が手伝ってくれる?

・河西さん

双子の兄の方は手伝ってくれないんですけど、この二人はめちゃくちゃ仲悪くて、お互いすごい嫌いなんですよ。ゆうたの方は見つけたら転がってって髪引っ張ったりとか、ゆうたの方から攻撃するんですけど、なんか気に入らないんだと思うんですよね。自分に似たものが存在するのが嫌なのか、気に触るのか目につくのか分からないんですけど、とにかく仲が悪くって笑。双子のお兄ちゃんの方はゆうたが触ったものはもういらないって、ほんと子供じみてる感じなんですけど笑。きっと心の中でどっか繋がってるんだとは思います。

・けみさん

へ〜笑。やっぱ生涯のライバルでしょうね。

・河西さん

でも、どっちかが具合悪くなるとどっちかはすごく心配するので。ちゃんと繋がって想ってはいるんだろうなと思いますね。

・けみさん

で、ゆうたくんも伝え方がないからね。そういう激しい伝え方になるということにしときましょう笑。もうそれプロレスじゃん。

・河西さん

今でもそんな感じですね笑

・けみさん

ごめんなさい。えっと話を戻しますね。二歳ぐらいで家に戻ってきた時から障がいがあるってことはわかってた?

・河西さん

そうですね、二人の違いが結構あって。この時期の子ができることがゆうたの方はできなかったので、比べる対象がある分「あ〜これが障がいに繋がっていくんだな」っていうのはわかりやすかったですね。

・けみさん

なにか具体的な話はあります?

・河西さん

赤ちゃんをうつ伏せにした時に自分で腕立てみたいな感じで顔をあげますってのがあって、お兄ちゃんの方はできるんですけど、ゆうたの方は上がらなくて。

・けみさん

そういう訓練するんですか?

・河西さん

リハビリもありますね。ずっと家でやるんですけど、ゆうたの方は全く顔も上がらなくて。床にベタってなったままで何にも動かなかったので。あ〜これは全然違うな。ずっとやらせてても可哀想だなってなったりすることもありましたね。

・けみさん

歩き出すのって何歳です?

・河西さん

長男だと10ヶ月ぐらいで歩けてたんですけど。双子の兄の方はギリギリ二歳ぐらいで歩きましたね。

・けみさん

ゆうたくんは筋肉固まるとかない?

・河西さん

固まるとかはないんですけど、脳出血起こして右がまだ麻痺してますね。ズリズリはって進む時は左手だけで、左手がすごい発達して色んなことができるようになってますね。

・けみさん

例えばどういうことができますか?

・河西さん

ちっちゃいもの。例えば落ちてる髪の毛つまんでポイってしたりとか、あとは握力がとにかく強いので、色んなものガッと掴んで投げ飛ばしたりとか重たいもの掴んで投げ飛ばしたりしてますね笑

・けみさん

俺たちの両手分の気力を片手に注いでるんですね。二歳で障がいがあるってわかったあと、何か大きな出来事ありましたか?

・河西さん

股関節の手術をしたんですよね。年中さんぐらいの時だったんですけど。足が突っ張ってきて股関節が脱臼しそうになったり、足が曲がったまま伸びなくなってきたりとかしたので、筋肉の繊維に切れ目を入れて伸ばすっていう筋解離術っていうのをやった時に、おへそからしたが全部ギプスなんですよ。シャキーンって感じの。お尻のところだけ穴が開いているような。その時はすごく大変そうでしたね、本人が。

・けみさん

そりゃ大変だわ。その後、足は大丈夫なんですか?

・河西さん

そうですね。成長とともに戻ってはきちゃうんですけど、今の所次の手術って話はないですね。

・けみさん

一番上のお兄ちゃんは彼に対して、何歳ごろからケアをしなきゃいけないって思い始めましたか?

・河西さん

うーん。最初はとにかくヤキモチを妬くっていう感じで、そっちにばっかりお世話してるので、自分の方向いて欲しくてそんな時期が長かったんですけど、小学校の3〜4年生ぐらいですかね。ちょっとずつお手伝いしてくれるようになって、今だと一緒にお風呂して抱っこしてくれたりとか、ちょくちょく発作が起きるんですけど嘔吐発作って目が回って嘔吐しちゃうんですけど、始まりそうになったらすぐ洗面器持ってきたりとか。色々私がやろうとすることをいつも見ているので、あれとってほしいこれとってほしいっていうのを言わなくても全部持ってきてくれたりとかはしますね。「何いる?」とか聞いてくれたりしますね。

・けみさん

助かりますね。

・河西さん

そうなんですよ。でも、そういうのをあまり知られたくないみたいで。学校とかでも「先生に言わないでほしい」っていうのは言ってますね。

・けみさん

お年頃やね。

・河西さん

そうですね。すごい気遣ってくれますね。

・けみさん

素晴らしい環境ですね。

・河西さん

なんか兄弟3人いて刺激がすごいあって、成長してるなって感じることもあるんですけど、ただ一人っ子の親御さん見てるともっと向き合ってたり、色んな病院とか探したりされてると思うので、うちは三等分されるのでゆうたに対して自分が雑になっちゃってる部分はある気がしますね。

・けみさん

うん、あの〜何とも言えないですね笑。まあ、良いことだと思いますよ。やっぱり出産だったり、3.11だったりを乗り越えてお母さんが強くなってるじゃない?

・河西さん

そうですね。子供達のおかげで成長させてもらってますね。人生がだいぶ変わりましたね。

・けみさん

いいですね、ありがとうございます。とりあえずこんな時間なっちゃった。今日はありがとうございました。

・河西さん

ありがとうございました!

車イスラグビーの池崎大輔選手と一緒に撮ったお写真