全何回になるか、私たちにも予測できない「ONEARTインタビュー」
ご家族の人生、お子さんの障がいのこと、大変なこと、幸せなこと、親御さんにお話を伺っていきます。
今回は、かどかわみく君と、お父さん(門川泰之さん)にお話を伺いました。
第一回「日本に数人しかいない障がいだと判った」
け:お父さん、今日はお時間いただきありがとうございます。みくくんも元気そうですね。
父:こちらこそありがとうございます。今日は何でも喋るんで(笑)
け:みくくんとは、一昨年一緒に作品を作りましたよね。で、それを買ってくれた人がいて。その買ってくれた人から、みくくんの絵を借りてニューヨークで展示会しました。懐かしいなあ。
父:みくにとっても家族にとっても、良い思い出です。
け:思い出話をしたい気持ちはぐっと抑えつつ、インタビューを始めたいと思うんですけど、みくくんの障がいについて、少しお話しいただけますか?
父:はい、みくの病名は確定してまして、「ボーリングオピッツ症候群」といいます。検査をして、この病名がついたのが3年くらい前で、その時は、日本にみく一人しかこの病気の人がいてなかったんですけど、今、日本に5人いるみたいです。1998年くらいに見つかった、とても珍しい病気で、世界でも100人くらいしかいないみたいですね。「病名のない子どもをなくそう」というプロジェクトに参加して、そこで遺伝子から何から全部調べて、8ヶ月後くらいかかって、やっと診断がつきました。
け:みくくんって今高校生ですよね?生まれた時はどうだったんですか?
父:生まれた時は、もちろんこの確定診断もついてなかったですけど、生まれて2日目くらいでお医者さんから「この子は重い障がいがあります」と言われまして。「えー!!!??」みたいな感じでしたけどね(笑)
け:じゃあ、病名もわからず、どうやって対応していいかもわからない状態だったんですか?
父:そうそう、先生たちも分厚い本めくって「これじゃないか、あれじゃないか」って色々言ってくれるんですけど、結局全然違う病気で。
け:今は病名が分かっているわけですけど、病名が分かる以前は、どうやって対応してたんですか?
父:重たい障がいの子って、5歳から10歳くらいまでがすごいしんどい時期なんですね。けみさんもご存知かもしれませんが、5歳くらいで亡くなる子って結構多かったりもして。
け:みくくんも、やっぱりそれくらいの時期が結構大変でした?
父:はい。みくも、やっぱい小さい時はすごく病弱で、3種類の肺炎に立て続けにかかったり、もう入院漬けの日々だったですね。普通のお子さんと違ってみくは感染症に弱くて。普通だったらへっちゃら、みたいな感染症でもすごく長引くんですよね。感染症にかかると辛くて全然眠れないみたいで、1週間くらいずっと起きてるんですよ。で、それが終わると今度は1週間くらい「いつ起きてんの?」ってくらい、冬眠みたいな感じでずっと寝てる。そんなのが年に数回ありました。あとは、てんかんが出たり、逆流性食道炎が出たり、その度に医者に駆け込むのか、根性で親が体力を尽くしながらなんとか看病するかしかなかったですね。小さい時は本当に大変でした。でも体が弱いこと以外は、それほど苦労がなかったですね正直。
け:それはお父さんがずっと対応してたんですか?
父:家族全員でずっと対応してましたね。あとは、障がいが重いので基本的には医者通いでしたかね。
け:「ボーリングオピッツ症候群」は具体的にどのような障がいなのですか?
父:20番染色体の長腕の中に、ASXL1という部位がありまして。このASXL1というのは、人間の血液とか骨髄を作るのに深く関わっている遺伝子らしいんですよね。で、本来ですと、このASXL1から骨髄を作りなさいよ、血液を作りなさいよという命令が出るんですけど、その命令が途中で止まってしまう、そんな障がいです。ちょっと難しいんですけどね。ASXL1に異常があるからといって、みんなボーリングオピッツになるわけではなくて、骨髄性白血病とかになる人もいるみたいです。
け:なるほど、、、難しい(笑)
父:でもね、ちょっと話が変わるんですけど、病名がわかったことで、今まで闇雲に根性だけで乗り切ってたものが、世界中に100人くらいですけど同じ病気の子がいるので、インターネットにある情報にたどり着けるんですよね。ほとんど英語なんですけど。それを読んでいると、「あ、やっぱりあの時はここが痛かったんだな」とか「こういうところを気をつけたらいいんだな」というのはすごくよくわかるようになったので助かっています。
け:病名がわかったことで、シェアされている経験から対処法がわかるんですね。
父:そうなんですよ。ちなみにみくは、日本にいる「ボーリングオピッツ症候群」と診断がついている人の中で、最年長です。
け:おおおお!長老だ、長老(笑)
※「ボーリングオピッツ症候群」とは
遺伝性疾患であり、摂食困難、発達遅延、屈曲異常、異形の顔の特徴、および典型的な体の姿勢(BOS姿勢)を特徴とする。この症候群は、遺伝学的研究による確認の有無にかかわらず、独特の臨床的特徴(小頭症、三角頭症、口蓋異常、目立った眼および眼窩上隆起の形成不全、眼瞼裂の立ち上がり、鼻梁の陥没および前傾の鼻孔、顔面の火焔状母斑、低セット、後屈の耳、発育不全、および重度の発達遅延)に基づいて診断される。
出典: Journal of family medicine and primary care 2019Mar01 Vol. 8 issue(3)
第一回「日本に数人しかいない障がいだと判った」編はここまで、、、!みくくんの話はまだまだ続きます!第二回をお楽しみに!