全何回になるか、私たちにも予測できない「ONEARTインタビュー」
ご家族の人生、お子さんの障がいのこと、大変なこと、幸せなこと、親御さんにお話を伺っていきます。
今回は、まつもとりひと君のお母さん(松本実希さん)にお話を伺いました。
第一回「今すぐ、この瞬間」
け:今日はありがとうございます。りひと元気ですか?
母:こちらこそ、ありがとうございます。元気にやってますよ。絵も楽しそうに描いてます。
け:早速色々お話聞いていきたいと思うんですけど、りひとの障害について教えてもらえますか?
母:りひとはいわゆる「自閉症」です。「自閉スペクトラム」という診断が付いていて、実年齢の45%程度の成長度合いだと言われています。
け:おれもりひとと関わっていて、普通だなあと思うんですよね。そんな中で大変なことっ何かありますか?
母:そうですね、ざっくり言うと「先の見通しが立てられないこと」ですかね。例えば、「今日〇〇にいくから、いつまでに何を準備しなくてはいけない」というのがわからなくて、何でも”今”やろうとするんですよね。
け:それ捉え方によってはいいことだよね?(笑)
母:そうですね、確かに”悪いこと”ではないんですけど、その傾向は衝動的な行動にもつながることがあって。その日の予定が本人的に楽しみであればあるほど、家を飛び出して行ってしまうんですよね。この前も、学校で楽しいレクがある日で、「〇〇時に家を出るよ」と伝えてはいるんですけど、我慢できなくて家を飛び出しちゃって。大きな事故には繋がらなかったですけど、ヒヤッとすることはしょっちゅうです。
け:それ、危ないね、、、
母:あとは飛び出し以外にも「視覚優位」というのがあって、見たものに興味を引かれて周りが見えなくなっちゃうので、迷子になりやすかったりというのはあります。とにかく、注意散漫ですね。
け:りひと今何歳でしたっけ?
母:9歳です。男4人兄弟の3番目です。お兄ちゃんたちがもう結構大きいので、助けてくれることが多くて、その点は助かってますね。
け:将来のことを考えても、他に男兄弟が三人いるっていうのは、心強いね。りひとが生まれてから、今までの経過ってどんな感じだったんですか?
母:りひとはまず、仮死状態で生まれてきて。
け:産む前にそういう可能性があると医師からは伝えられてたの?
母:そういうのは全くなく、普通にお産も進んで、でも産まれたから1分弱全く泣かなかったんですよ。でも「新生児仮死」ではない、と言われて。そのあと、無事に泣いて、呼吸もしてくれたからよかったんですけど。あとはその後の身体的な発達の遅れも特になかったですね。それで、1歳になって発語があって、すくすく育ってくれているなと思っていたんですけど、1歳半になった時にそれまであった発語が全く無くなってしまって。それは、自閉症の「後退」という症状みたいで、そこから4歳まで発語が全くありませんでした。「自閉症」の診断が付いたのは、3歳になる1日前です。その頃は障がい児のデイサービスというのが、あまり一般的ではなくて、どこに相談したらいいかわからなくて、頭を悩ませました。色々調べたり、病院に行ったりしながら、それでもどうしていいかわからなくて、時間が過ぎていって。それで、りひとが4歳になったタイミングで「てまりの花(りひとくんが通っている施設)」ができて、りひとは施設利用者の第一号でした。幼稚園は発語がないからという理由で受け入れてもらえなくて、4歳から現在に至るまで、デイサービスにのみ通い続けています。
け:発語がなくなってから、自閉症の診断が付くまでに結構時間経ったと思うんですけど、その間は病院でどんな処置を行っていたのですか?
母:その間は「言語聴覚士」の方に、療育という形で、発達支援をしてもらってました。それも、自宅の近くの病院には、そこまで体制が整っているところはなかったので、札幌市内の病院まで、時間をかけて通っていました。あとは、病院で行う発達支援は、医療行為に当たるので、デイサービスと比べると金銭的な負担も大きかったです。そんな状態がしばらく続いて。
け:その病院に通ってた時は、改善というか、発達の度合いが進むこともなく?
母:はい、なかったですね。発語も全くみられなかったです。なので、診断を付けてもらわないことには、デイサービスなどの施設が使えなかったんですよね。それで、ようやく診断が付いて、施設に通い出したという感じですね。4歳になって半年くらいで、ようやく発語が少し見られるようになって、でも時も「クレーン動作」が収まらなくて。普通は取りたいものがあった時、自分で取るか、「ママあれとって」と言葉で伝えることができるのですが、言葉がうまく出ないから、私の手を持って取らせようとするんですよね。これが6歳まで治らなかったです。
け:言葉は話せるようになったけど、クレーン動作っていうのはあったんだ?
母:そうです。話せるようになったと言っても、一語しか話せなくて。単語を繋げて会話にするのは、随分と時間がかかりましたね。
・・・第二回に続く。